July 2018

2018年
7月16日
(祝・月)

海 の 日
【博多祇園山笠2018大特集】
 今年も「前半」が終わりました。 例年この時期は同じ事を考え、口走っているんですがね・・・。

 5日(木)〜7日(土)にかけて西日本を襲った豪雨により、各地で被害が発生しました。 皆さんのところは大丈夫でしょうか?

 編集部はその時期に山陽〜山陰方面への取材に出かけていたのですが、山口の某所で公共交通機関が完全にストップしたことで、丸2日間「閉じ込められて」しまい、予定を途中で切り上げて、やっと動き出した鉄道で九州に戻ってきました。

天神のど真ん中も祭気分
 各地での雨の降り方は尋常ではなかったようですね。 残念ながら被災された皆さまには、お見舞い申し上げます。

 佐賀に本拠地が移って以来、ご覧のとおり取材活動も停滞しています。 例年「(唯一?)力を入れている」博多祇園山笠の取材、今年も期間中には間に合いませんでした。  山笠期間中に1日だけ工面して取材した記録を、ここに「大特集」としてお届けします。

 「手抜き」ではありますが、番号順の飾り山と、15日(日)の追い山の結果をお知らせしますね。

*****【飾り山二番山笠 千代流】*****
〔表標題〕鎮西三雄博多護
(ちんぜいのさんゆうはかたをまもる)
【人形師:川崎修一】
〔見送り標題〕維新回天石堂橋
(いしんかいてんいしどうばし)
【人形師:川崎修一】

 7年毎に回ってくる一番山。 追い山の櫛田入りで「祝いめでた」を唯一唄える名誉の山です。 今年の一番山は、参加人数の規模が最も大きい千代流。  千代流は、東流や中洲流同様、毎年舁き山と飾り山の両方を奉納している流です。

 表標題は戦国末期、島津軍から博多を守った高橋紹運、立花道雪、そして立花宗茂の三人の勇者を描いたもの。  そして見送りは、江戸末期に博多に亡命しようとする高杉晋作が、石堂橋の関所での画策をテーマにしたものです。
 
*****【飾り山六番山笠 東 流】*****
〔表標題〕桃太郎初陣
(ももたろうういじん)
【人形師:白水英章】
〔見送り標題〕太閤町割縁
(たいこうまちわりのえにし)
【人形師:室井聖太郎】

 博多駅から北の方進んだ大博通りの呉服町交差点付近に飾られている東流。 表標題は、この世の鬼を退治する桃太郎の物語。 上の方から雉、犬、猿の姿が見えます。  見送りは、豊臣秀吉が博多の区画整理事業としての町割を行った様子を描いたもの。 この博多祇園山笠の「流」も、この時の名残りです。

*****【飾り山七番山笠 中洲流】*****
〔表標題〕長政関ケ原武勲
(ながまさせきがはらのぶくん)
【人形師:三宅 隆】
〔見送り標題〕壮烈岩屋城之戦
(そうれついわやじょうのたたかい)
【人形師:溝口堂央】

 九州最大の歓楽街・中洲の一角に堂々と飾られている中洲流の飾り山。 表標題は黒田長政の関ケ原の合戦での武勲を、見送り標題は、戦国末期の岩屋城(現在の福岡県太宰府市にあった)における島津軍と大友軍の戦いを描いたもの。

櫛田神社のお膝元、川端通商店街

 この後にご紹介する上川端通と、川端中央街の飾り山は、川端商店街のアーケードの中に飾られています。

 山笠期間中、この商店街は山のぼせ(山笠に「はまってる人」たち)がウロウロしており、また、いくつかの店では水法被や手拭いなど、山笠用品も売られています。

 またこの周辺には神社仏閣が多いことから、この商店街には仏壇・仏具の店も多くあります。 その一方で、中洲の歓楽街のすぐ近くであることから、中洲のおネェさんの「制服」を扱っている店も並んでおり、一種「独特な雰囲気」の商店街です。

*****【飾り山八番山笠 上川端通】*****
〔表標題〕義経八艘飛
(よしつねはっそうとび)
【人形師:田中 勇】
〔見送り標題〕京鹿子娘道成寺
(きょうがのこむすめどうじょうじ)
【人形師:田中 勇】

 「走る飾り山」の異名を持つ八番山笠の上川端通。 今年の表標題は、平教経の追跡をかわした源義経の八艘飛を描いたもの。 そして見送り標題は、歌舞伎舞踊の演目のひとつ「京鹿子娘道成寺」を恋する娘の姿をテーマに描いたもの。

*****【飾り山九番山笠 川端中央街】*****
〔表標題〕
先陣宇治川
(せんじんうじがわ)
【人形師:中野親一】
〔見送り標題〕
朝定番アサデス。KBC
(あさのていばんあさです。
けーびーしー)
【人形師:中野 浩】

 川端商店街のアーケード内に飾られている川端中央街の飾り山。 表は平家物語にある「宇治川の先陣」をテーマにしたしたもの。  見送りは、昨年同様、地元の放送局(ラジオ・テレビ兼営局)であるKBC九州朝日放送のローカル朝番組を飾り山で表現したものです。

*****【飾り山十番山笠 ソラリア】*****
〔表標題〕巴御前
(ともえごぜん)
【人形師:置鮎正弘】
〔見送り標題〕尾張名古屋保城
(おわりなごやはしろでもつ)
【人形師:小嶋慎二】

 ソラリアは天神の中心部に近いショッピング・スポット。 ここに飾り山を置くようになって、今年で25周年を迎えます。  表は、源義仲に従軍した女武者・巴御前を描いたもの、見送りは、尾張・名古屋の繁栄を飾り山で描いたものです。

*****【飾り山十一番山笠 新天町】*****
〔表標題〕武士心薫立花城
(もののふのこころは
かおるたちばなじょう)
【人形師:亀田 均】
〔見送り標題〕サザエさん
(さざえさん)
【人形師:亀田 均】

 天神地区の中心・新天町に位置する飾り山。 表標題は、戦国時代に島津軍から攻められた立花城(現在の福岡市東区・新宮町・久山町の境付近)での立花宗茂の姿を描く。 見送りは、新天町の「定番」、今年はテレビ番組のスポンサーが変わったサザエさん。

*****【飾り山十二番山笠 博多リバレイン】*****
〔表標題〕蒙古襲来博多湾
(もうこしゅうらいはかたわん)
【人形師:生野四郎】
〔見送り標題〕神話稲羽之白兎
(しんわいなばのしろうさぎ)
【人形師:生野四郎】

 川端商店街アーケードの北側を出たところに飾られている飾り山。 表標題は、襲来した蒙古軍から博多を護る姿を描いたもの。 博多は二度に亘って元寇の攻撃を受けており、山笠のテーマにもよく取り上げられます。  見送りは、稲羽の白兎をテーマにしたもので、他の飾り山の勇壮なテーマの中で「清涼剤」的存在です。

*****【飾り山十三番山笠 天神一丁目】*****
〔表標題〕黒田関ケ原之陣
(くろだせきがはらのじん)
【人形師:中村信喬】
〔見送り標題〕命運耳川の合戦
(めいうんみみかわのかっせん)
【人形師:白水英章】

 天神商業地区の中で南の方に位置する百貨店:博多大丸の2つの建物の間に飾られている飾り山。 表標題は、中洲流同様、関ケ原の戦いでの黒田長政の武勲を描いたもの。  見送りは、現在の宮崎の地で大友軍と島津軍が戦った耳川の合戦をテーマにしたもの。 左の方には大砲の姿も見えます。

*****【飾り山十四番山笠 渡辺通一丁目】*****
〔表標題〕八俣遠呂智
(やまたのおろち)
【人形師:中野親一】
〔見送り標題〕愛と勇気のアンパンマン
(あいとゆうきのあんぱんまん)
【人形師:中野 浩】

 天神から南に向かった渡辺通一丁目に位置する飾り山。 表標題は、やまたのオロチ退治を描いたもの。 見送りは、ここも定番、今年も人気のアンパンマンとその仲間たちが祭を盛り上げる。

*****【飾り山十五番山笠 福岡ドーム】*****
〔表標題〕躍進玄海鷹
(やくしんげんかいたか)
【人形師:置鮎琢磨】
〔見送り標題〕攻防千早城
(こうぼうちはやじょう)
【人形師:三宅 隆】

 今年はいま一つ調子が上がらない福岡ソフトバンクホークスの本拠地、ヤフオクドームの前の飾り山。 表標題は定番、今年もホークスの選手達の活躍ぶりを描いたもの。  見送りは、現在の大阪府と奈良県の境に位置する千早城に篭った楠木正成と、それを攻める足利軍の攻防を描いたもの。

****【飾り山十六番山笠 博多駅商店連合会】****
〔表標題〕男西郷どん
(おとこせごどん)
【人形師:生野四郎】
〔見送り標題〕ゴリパラ見聞録
(ごりぱらけんぶんろく)
【人形師:田中 勇】

 博多駅の西側出入口の博多口に鎮座する飾り山。 今年はテレビ番組が表・見送りの共通テーマで、表標題は、大河ドラマ「西郷どん」を描いたもの。 見送りは、地元のテレビ局・テレビ西日本(TNC)のローカル番組が旅人を迎えます。

****【飾り山十七番山笠 キャナルシティ博多】****
〔表標題〕激闘三太刀
(げきとうみたち)
【人形師:置鮎琢磨】
〔見送り標題〕ゴジラ博多上陸
(ごじらはかたじょうりく)
【人形師:置鮎琢磨】

 相変わらず人気のショッピング・スポットのキャナルシティの飾り山。 表標題は、川中島の戦いで上杉謙信が武田信玄の本陣に攻め込み、三太刀に渡って斬りつけたものを信玄が軍配で受けたことを描いたもの。  見送りはゴジラの博多上陸の図。 キャナルシティ博多で独自に企画したプロジェクション・マッピングとタイアップしたもの。

*****【飾り山番外 櫛田神社】*****
〔表標題〕日本武尊征熊襲
(やまとたけるのみことくまそをうつ)
【人形師:川崎修一】
〔見送り標題〕如水九州平定功
(じょすいきゅうしゅうへいていのいさおし)
【人形師:室井聖太郎】

 年中見ることができる博多総鎮守・櫛田神社の飾り山。 今年の表標題は、熊襲を征伐してその後日本武尊の名前の由来となる一場面。  見送りは、黒田如水の優れた知略と篤い人望を駆使して九州を平定する様子を描いたもの。

舁き山を奉納する櫛田神社の清道旗
 博多祇園山笠は、毎年7月1日から15日までの15日間の開催で、曜日には関係ありません。 飾り山は14日の夜まで公開されます。

 最終日の15日は、山笠最後のイベントの「追い山」が朝 4:59 にスタート。 飾り山とは別に造られる7つの舁き山(かきやま)と、八番山の上川端通の飾り山を櫛田神社に奉納(=「櫛田入り」と言います)します。  舁き山が櫛田神社の境内で一回りする赤い清道旗は、既に準備完了。 通常は何もない境内に清道旗が立つと、山笠のあの盛り上がりと夏の到来を感じます。
 


 今年で 777年目を迎える博多祇園山笠。 15日(日)朝の追い山で無事に全日程が終わりました。 今年は追い山が日曜日だったので取材に行きたかったのですが、残念ながら別件が入ったため取材できませんでした。  今年は猛暑日が続いているので、追い山は早朝にも関わらず暑かったことと思います。

 それでは、本サイトではお馴染みの博多祇園山笠の総括をしましょう。

平成30 (2018) 年度 追い山総括
流 名標   題櫛田入
タイム
全コース
タイム
一番
山笠
西  流報文武秀小松君ぶんぶしゅうなる
こまつのきみにほうず
31秒0131分14秒
二番
山笠
千 代 流藤花庸功千代芳とうかようこう
ちよにかんばし
31秒2229分00秒
三番
山笠
恵比須流山 呼 萬 歳 聲やまはよぶ
ばんせいのこえ
33秒7731分52秒
四番
山笠
土 居 流歌舞伎十八番 暫かぶきじゅうはちばん
しばらく
35秒7230分43秒
五番
山笠
大 黒 流吾 在 倶われともにあり34秒2429分26秒
六番
山笠
東  流忠君慈母成鬼神きみをおもえば
じぼもきしんとならん
30秒6929分17秒
七番
山笠
中 洲 流開 運 七 福 神かいうんしちふくじん37秒7833分18秒
八番
山笠
上川端通表:義経八艘飛よしつねはっそうとび60秒24−−
見送り:
京鹿子娘道成寺
きょうがのこむすめ
どうじょうじ

 全コースのタイムでは、千代流と大黒流、そして東流の「3強」が30分を切るタイムを出しています。 櫛田入りは昨年に引き続き、東流が最速のタイムを出しました。

 これまでの記録に興味がある方は 2017年の追い山のタイム2016年の追い山のタイム などをご覧ください。

 今年は早々に梅雨明けし、ここのところは狂気沙汰の暑さが続いています。 山笠も終わり、博多は暑い夏を迎えました。(1)