Antenna for Digital TV - Part1

地上デジタルTVアンテナ
製作&設置奮戦リポート

〜その1〜
2011年5月 おもしろタイリポート編集部・テレビ受信グループ
 思い立って地デジのアンテナを作ってみました。 本来であれば、シッカリ設計してある程度細かい数値まで算出し、設計どおりの寸法で丁寧に作るに越したことはないのですが、実際には結構イイ加減に作っています。  『楽しんで作ってみよう』のつもりなので、細かいことは大目に見て下さい(笑)。

もともとあった VHF(下の長い骨)
+UHF(上の短い骨)のアンテナ
【プロローグ】
 2010年11月、編集部にも地上+BSのデジタル放送が受信できる薄型テレビを導入 しました。

 地上デジタルは UHF のアンテナが、BSデジタルは BS 用のパラボラアンテナがあれば受信することができます。

 編集部にはもともと、テレビのアナログ放送受信用に VHF のアンテナと UHF のアンテナが、BSアナログ放送受信用には BS のパラボラが上がっていたので、UHF と BSのアンテナはそのまま使っていました。  BS は電波が天から降ってくるので、アナログからデジタルになっても電波の強さはそれほど変わらず、不便はありませんでした。 しかし地上デジタル(以降「地デジ」)は、一部のテレビ局の電波受信レベルが弱く、日によってうまく映らない時があったのです。

 編集部がある福岡市では、従来の UHF アナログテレビ放送の送信所が南の方の鴻巣(こうのす)山、デジタルテレビ放送の送信所は北の海岸沿いの福岡タワーなので、鴻巣山よりも北のエリアでは、 従来のアナログテレビ放送の電波と、新しい地デジのテレビ放送の電波が違う方向から飛んできます。   

2010年11月 編集部へのデジタルテレビ導入後のアンテナ結線図

 上の図にある屋根の上の短い骨のアンテナは、地デジの電波が飛んでくる福岡タワーとはソッポを向いているので、福岡タワーからの電波が強くなる方向に回してやれば、それで済むのですが、編集部の屋根は何とも登り難い作りになっています。 どうしようかなぁ・・・と考えていたら、編集部員から「映りが悪いチャンネルがあるので、何とかしろ!」と不満の声が上がりました。

 編集部は、地デジのテレビ放送が送信されている福岡タワーから数kmのところにあります。 今は周辺にマンションが建ってしまったので福岡タワーは見えないのですが、以前は直接見えていました。 電波が飛んでくるところが直接見えるくらいであれば、 大したアンテナでなくても地デジが映るんじゃないか? であれば、アンテナをわざわざ屋根の上に上げず、屋根裏に置いても問題ないのではないか? 少しケチってやろうかな・・・と、ヨコシマな考えが浮かびます。  よし、地デジを受信するためのアンテナを作ってみよう! 一念発起して、編集部のテレビ受信グループが調査を始めました。


【調 査】
 アンテナを作るに当たって最も重要な情報は、見ている地デジのテレビの電波がどんな周波数[MHz]、あるいはどんな波長[cm]なのか?ということです。   
全国のリモコン「1」のNHK総合の
地デジチャンネルと周波数の実例
エリア地デジ
チャンネル
周波数
[MHz]
波 長
[cm]
北海道〔札 幌〕1950951.64
山 形〔山 形〕1447956.93
栃 木〔宇都宮〕4767751.64
静 岡〔静 岡〕2051556.93
長 野〔長 野〕1749751.64
奈 良〔奈 良〕3158151.64
岡 山〔岡 山〕3258751.11
香 川〔高 松〕2452756.93
宮 崎〔宮 崎〕1447951.64
宮 崎〔日 南〕5270756.93

 地デジの周波数はネットで調べればわかりますが、エリアによっては中継局の電波を受信しているところもあります。 ここで注意しなければならないのは、リモコンの番号と、実際に地デジの電波が出ているチャンネルは、一致しないことです。  また同一都道府県内であっても、どこの送信所の地デジの電波を受信しているかによって、リモコンの番号が同じでも実際の地デジのチャンネルが違うことです。

 例えば右の表のとおり、同じリモコンの「1」の NHK総合でも、エリアによって地デジのチャンネルが異なるので、テレビ放送の電波が出ている周波数が違います。 また、同じ宮崎県内でも、 宮崎市と日南市では、同じリモコン「1」ですが、テレビ放送の電波が出ている地デジのチャンネルが異なるので、周波数が大きく違います。

 ネットで地デジのチャンネルが判れば、そのチャンネルで送信されているテレビの周波数は、概ね

   *周波数 f [MHz] = (6×地デジのチャンネル)+395

となります。 本当は各チャンネル毎に、小数点以下が何桁か付くのですが、実際にアンテナを作る上では殆ど影響ないので無視します。 上の表の岡山〔岡山〕(地デジチャンネル:32)を例にとると、テレビが放送されている周波数は、(6×32)+395=587[MHz] になります。

 次に、テレビが実際に放送されている周波数から、アンテナの長さに関係する波長[cm]を算出します。 波長を求めるには、次のように計算します。

   *波 長λ[cm] = 30000÷周波数[MHz]

 例にとった岡山〔岡山〕のテレビ局電波の波長は、 30000÷587=51.11[cm] となります。  ここまで勉強したところで、福岡タワーからはどこのテレビ局が地デジの何chで電波を出しているのかネットで調査して、各チャンネルの周波数[MHz]と波長[cm]を算出してみました。
  
【福岡タワーから送信している地デジチャンネルと周波数】
リモコン
番号
放送局名ネット系列地デジ
チャンネル
周波数
[MHz]
波長[cm]
KBCテレビ朝日3158151.64
NHK教育2252756.93
NHK総合2856353.29
RKBTBS3057552.17
FBS日本テレビ3258751.11
TVQテレビ東京2655154.45
TNCフジテレビ3459950.08

 こうしてみると、一番低い周波数は NHK教育:22ch の 527MHz=波長:56.93cm、一番高い周波数は TNC(フジテレビ系列):34ch の 599MHz=波長:50.08cm ということが判りました。


【アンテナの設計】
 地デジを見るために受信する電波の周波数と波長が判ったので、アンテナを設計します。 「アンテナの設計なんて、ムズカしいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、屋根の上に上がっているサカナの骨のようなアンテナの設計は、そんなに難しいものではありません。

 難しい理論は抜きにして、今回はアマチュア無線家の方が設計された こちら (*1) を参考に、比較的広い周波数の電波の受信性能が高い、以下の寸法の6エレメントOWA(Optimized Wideband Array)アンテナを設計してみました。 ポイントは、テレビに繋がる同軸ケーブルを直接接続する「J」の字のホネの長さ:25.7cm です。   

今回設計した6エレメントOWAアンテナ

 調査の結果、福岡タワーからの地デジの電波は、527〜599MHz(波長:56.93〜50.08cm)ということが判りました。 従って、この周波数の真ん中くらいの波長の周波数にターゲットを当てて設計します。

   *設計波長λo  = (56.93+50.08)÷2 = 53.51cm

 テレビへの同軸ケーブルを直接繋ぐ「J」の長さは、概ね設計波長λoの 48%程度。 計算すると

   *「J」の長さ = 53.51×0.48 = 25.68cm

 となったので、25.7cm としました。

 そして、広い周波数(チャンネル)の電波を受信しやすいように、片方を「U」の字型にします。 「U」の幅も厳密に計算すれば○cm●mmになるんですが、面倒なので 1.0cm にしています。

 これで何とか設計が終わりました。 さぁ、それではこのアンテナを作るための材料を調達に行きましょう! どこへ行けばいいのかな?