Report 35a

タイと世界の繋がり
〜アジア諸国との関係〜
 ここでは,バンコクとアジア圏内との繋がりを見てみましょう。 アジアでも東アジア方面は,中国(本土),日本とその他の国や地域に分けて集計してみました。
南西アジア向の週間フライト数 (2004年1月現在)
国 名都市名バンコク向バンコク発
インドDelhi1818
Chennai/Madras107
Gaya11
Kolkata/Calcutta1012
Mumbay/Bombay88
パキスタンIslamabad22
Karachi77
Lahore44
バングラデシュDhaka1411
ネパールKathmandu1010
スリランカColombo1212
カザフスタンAlmaty11
トルクメニスタンAshkhabad22
ウズベキスタンTashkent44
南西アジア計10399

【南西アジア方面】
 インドから西アジア方面の運行便は全体の 8% ほどです。 バンコクからの距離を見ると,インドの Delhi は中国の上海と同程度で 3000km 弱, パキスタンの Karachi が韓国の釜山や日本の福岡と同程度で 4000km 弱です。 似たような距離に位置しながら,例えばインドと中国(本土)で,国レベルでのフライト数を比較すると, インドは中国の約半分,中国本土+香港と比較すると5分の1しかフライト数が無いことが判ります。 同様に韓国とパキスタンを比較すると,韓国はパキスタン向けの約5倍のフライト数になっています。

 更に,南西アジア向けのフライト数は,前ページの中近東向けのフライト数 (67/67) と併せて漸くヨーロッパ向けのフライト数 (168/168) に肩を並べるほどというわけです。 このことから, タイはヨーロッパや東南アジア,東アジアとの関係に較べると,南西アジアとの関係が希薄であることがうかがえます。 これには,宗教や民族の繋がりによるところがあるのかもしれません。

 とはいえ,ネパールや中央アジアの旧ロシア圏の国々との直行便を持つことができるバンコクのロケーションは,東アジア方面からこれらの地域を訪れる人々にとって魅力の一つとなっています。

【東南アジア方面】
 バンコクは東南アジアの玄関口,周辺諸国,特に隣接国とは強い絆で結ばれています。 単純にフライト数が二国間の関係の強さを表すと見なせば, 東南アジア諸国の結びつきの強さは,シンガポール,カンボディア,ベトナム,マレーシア,そしてミャンマーの順になります。

東南アジア向の週間フライト数 (2004年1月現在)
(カッコ内)はフライト数ベスト10の順位
国 名都市名バンコク向バンコク発
カンボディアPhnon Penh(7) 4646
Siem Reap(5) 5449
シンガポールSingapore(2) 121121
マレーシアKuala Lumpur(8) 4545
Penen77
ラオスVientiene2121
Luang Prabang66
ミャンマーYangon(9) 3737
Bagan33
Mandalay33
インドネシアJakarta77
Dempasar77
ベトナムHanoi2828
Hochi Minh City(10) 3535
Danang33
フィリピンManila3031
ブルネイBandar Seri77
東南アジア計460456

 東南アジア向けのフライトは,全体の 35% を占めており,中でもシンガポール向けのフライト数が突出しています。 これはタイ−シンガポールの関係が強いこともさることながら,ヨーロッパ系の航空会社(スカンジナビア航空とスイス航空がそれぞれ7便, フィンランド航空とトルコ航空が各々4便の計22便)がバンコク経由でシンガポールまで運行し,東南アジアのこの2つの都市を結んでいることもフライト数のカウントに「貢献」しています。 これはヨーロッパから見ると,バンコクとシンガポールが東南アジアの2大拠点となっていることを意味するものです。

 ヨーロッパ系航空会社がバンコク経由で運行しているその他の都市は,ベトナムの Hanoi(エールフランスが3便),ホーチミン(エールフランスが4便,ルフトハンザが3便)と,フィリピンの Manila(ルフトハンザが7便のほか,エジプト航空が2便,クウェート航空が4便)があります。  それぞれにかつての宗主国や経済・民族・宗教などでの結びつきがうかがえます。

 タイの隣接国ではカンボディアが「破格」の繋がりで,2つの都市で併せて週に100便と,香港,シンガポールに次ぐ頻度です。 カンボジディアがタイの経済圏であることに加え,アンコールワットなどの観光資源にフライトが支えられていることを物語っています。

 また,バンコクからの距離を考えた場合,シンガポール(約1400km),Manila(約2300km)のフライト数に較べると,さほど変わらない距離であるにもかかわらず,インドネシア(Jakarta で約2400km)やブルネイ(約1700km)向けのフライトが極端に少ないことが判ります。 これは恐らく, 二国間関係が,宗教の違い(タイ=仏教が主流,インドネシア・ブルネイ=イスラム教が主流)による影響を少なからず受けているものと推測されます。

東アジア向の週間フライト数 (2004年1月現在)
(カッコ内)はフライト数ベスト10の順位
国・地域名都市名バンコク向バンコク発
台 湾台 北(3) 6666
高 雄99
韓 国仁 川(6) 5253
釜 山88
大 邱82
マカオ55
香 港(1) 131131
北朝鮮平 壌11
東アジア計264265

【東アジア方面】
 中国(本土)と日本を除く東アジア向けのフライト数は,全体の20%程度。 特筆すべきは,バンコクは北朝鮮・平壌との定期航空路を持っていることです。 私自身,バンコクに来るまでこのことを知らなかったのですが, バンコクには北朝鮮大使館もあります。

 バンコク〜平壌便は北朝鮮の朝鮮民航が運航しており,毎週木曜日に平壌→バンコク,そして翌日の金曜日にバンコク→平壌を旧ソ連製の旅客機(タイムテーブルによるとイリューシン IL-62型機)で結んでいます。 手続き的には容易ではありませんが, 「物理的にはバンコクから平壌に行くことができる」という事実に,少しばかりビックリしています。 視点を変えれば,これはタイ政府が,どんな国とも外交関係を築こうとする姿勢を表しているものとも解釈できます。

 表にある131便... バンコク発着フライト数のトップ,全体の1割を占めるのが香港便です。 シンガポール同様,ヨーロッパ系(フィンランド航空が3便)や中近東系(ガルフ航空とエミレーツ航空がそれぞれ7便)に加えアフリカ系(ケニア航空が3便,エチオピア航空が2便)など,バンコク発26便, バンコク着28便をバンコク以西の航空会社が足を伸ばして運航しているのですが,それでも週131便(1日平均19便)という数字は国際線では驚異的です。 タイでは中国(華僑)系の人たちも少なくないので,シンガポールと並んで経済的・人的交流が盛んなのでしょう。  これだけ多くの便が飛んでいれば,時期や航空会社によってはかなり安い航空券も入手できるのではないかと考えられます。

中国本土向の週間フライト数 (2004年1月現在)
都市名所在省名バンコク向バンコク発
北 京1717
成 都四川省99
重 慶四川省11
広 州広東省1515
桂 林広西チワン族自治区22
杭 州浙江省44
昆 明雲南省1010
上 海2323
汕 頭広東省44
瀋 陽遼寧省11
廈 門福建省55
中国本土計9191

【中国本土方面】
 中国本土が束になってかかっても香港便のフライト数には敵いませんが,それでも全体の 7% ほどを占めており,中近東よりは多いフライト数です。  インドに較べても遙かに多いフライト数を確保していることから,タイがアジアの中では東に眼を向けていることがうかがえます。

 タイ以西の航空会社ではエアインディアが香港へ週2便,エチオピア航空が広州まで週1便,それぞれ運航しています。

 現在は先駆的に経済発展を遂げている中国の東部や,タイに近い南部との便が主流ですが,今後は観光や経済的交流なども含めて,更に中国本土内陸の都市とも航空路が開かれるのではないでしょうか。

【日本方面】
 最後に日本とバンコクを結ぶフライトを分析してみましょう。 バンコクからの日本便は 8% 程度,しかしアジアの小国でありながらインドと同様,バンコクに4つの都市からの直行便を持ち, 中国本土以上の定期便数を持っているのです。

日本向の週間フライト数 (2004年1月現在)
(カッコ内)はフライト数ベスト10の順位
都市名バンコク向バンコク発
東京(成田)(4) 5763
大阪(関西)2831
名 古 屋88
福   岡55
日 本 計98107

 タイを含めて東南アジアから見ると,日本はアメリカ向けフライトの重要な拠点です。 タイ航空はバンコクからロスアンジェルスに毎日定期便を運航していますが, 飛行機の航続距離の関係でダイレクトフライトは無理なので,4便を東京(成田)経由で,3便を大阪(関西)経由で飛ばしています。 また,アメリカのノースウエスト航空とユナイテッド航空も, サンフランシスコから東京経由で毎日バンコクへのフライトを運航しています。

 ところで2004年2月から,シンガポール航空がA340-500型機でシンガポール〜ロスアンジェルス間の直行便(距離 13000km:この時点で世界一長い直行便路線)を就航させました。  従来は日本経由だったのですが,直行便運航により2時間ほどの時間短縮が図れるとのことです。 他の東南アジア諸国の航空会社がアメリカ向けの直行便を運航するかどうかは判りませんが, 今後の東南アジアとアメリカ,日本との関係によっては,東南アジア各国がアメリカ向けの直行便を運航することになるのかもしれません。

 タイ以西の航空会社では,エアインディアとビーマン・バングラデッシュ航空がそれぞれ週1便,バンコク経由で東京まで定期便を運航しています。


バンコク空港時刻表
2004年1月号
 以上いろいろと書き立てましたが,如何でしたでしょうか? 労力をかけた割にはあんまり的確な分析ができてないような感じもしますけど...。

 とはいえ,タイが近代以降,南アジア及び東南アジアで唯一欧米の植民地にならなかったこと,タイ人の9割以上は仏教徒であること, タイの経済の中枢は華僑系の人たちが握っていること,東南アジア北部ではタイがひとつの経済圏をつくっていること,タイの言葉や料理などは中国の影響を少なからず受けていること, etc, etc... タイに関する歴史,文化,宗教,民族などを勘案すれば,ここで「分析」した航空路による国の繋がりも,頷ける部分があるのではないでしょうか? 日本でも成田からどんな国に, どんな航空会社が定期便を運航しているかを分析すると,その時々における日本の立場や役割がおぼろげにでも見えてくるのではないかと考えます。

 前ページとこのページの記述は,タイで毎月出版されている "THAILAND AIRLINE TIMETABLE Vol.28, Jan.2004 (Advertising & Media Consultants Co.,Ltd.刊)" を基に分析しました。  バンコクからのフライトは,新しい都市へ新たに就航したり,既存路線の増減便や廃止など,刻々と変わっていくので,これはあくまでも 2004年1月断面での状況とご理解下さい。  フライト数の数え間違いなど,必ずしも正確な分析ではない部分もあるかもしれませんが,現時点の世界観におけるタイの立場の理解に某かでも貢献できれば幸甚です。 (2004年4月記)

AIR KORYO(朝鮮民航の英語表記)
の出発手続きカウンタ案内
バンコクに駐機する朝鮮民航機