Cambodia Report 4.2

バンテアイ・スレイ
−その2−

第二周壁東塔門そばのナンディ(聖牛)の彫像
 環濠を左右に見ながら進んでいくと,こぢんまりとした「境内」が近づいてきます。

 第二周壁の東塔門をくぐると,「上半身」が無くなっている牛の石像が迎えてくれました。 この石像はナンディと呼ばれる聖牛で, ヒンドゥー教の神様の一人であるシヴァ神の乗り物とされています。 前のページでも,神妃ウマと一緒に乗っていた姿がありましたね。  まぁ,その実物大に近い像と思って貰えばいいでしょうか。

 ナンディの横を通り抜けると,最も内側の第三周壁の東塔門があります。 この遺跡の美しさとその文化的価値の素晴らしさは,写真をご覧戴ければお判りになるかと思いますが, 最近では観光客による遺跡の損傷を避けるため,第三周壁の内側から中央祠堂東側の付近は立入禁止になっていました。

 遺跡が観光地化されて誰でも気軽に見に行けるようになることは,それはそれで喜ばしいことなのですが,その反面不特定多数の人々が訪れることから, 歴史的文化遺産が損傷を受ける可能性も高くなることになります。 良識ある人間として,節度ある態度で歴史的遺産を鑑賞したいものです。

 それではお寺巡りの「鉄則」に則って常に中央に右肩を向けるべく,全体を右回りで見ていきましょう。


第一周壁東塔門

南東側から臨む第一周壁東塔門。 早朝の東の低い位置からの陽光のため, 周囲の陰が映り込んでいるが,建物全体は赤みがかった煉瓦色のような色彩。

第一周壁東塔門北側

塔門北側の偽窓(上)。 この頃は勿論ガラスなどは無いので,縦方向の格子を入れているスタイルが一般的。 作られた時代や場所によって, 格子の装飾が異なる。 偽窓とは,一見窓風だが実際には窓として機能しない壁面の装飾で,クメール遺跡では特徴的。
偽窓上部(右上)と偽窓右側(右)の彫刻。 繊細に彫られているこのような紋様が,この遺跡全体に施されている。



南経蔵

東側から望む南経蔵全景(上)。 経蔵とは図書館あるいは書斎のようなもので,教典や宝物を納めた建物。 クメール遺跡では, 中央祠堂前方(一般的には東側)の南北に位置している。 手前には,立入禁止の鎖が巡らせてある。
この経蔵の南東角の上部にあるマカラと思しき彫刻(左上)。 マカラは魚の鱗と象の鼻を持つといわれる神話上の鰐に似た水中動物で, クメール遺跡の角などに彫刻が見られる。
南東角の下部でも見られる緻密な石刻(左)。


南祠堂を南側から望む

南祠堂南側の偽扉(左)。 偽扉(「ぎふ」と読むらしい)は壁面に施された扉風の装飾で,第一周壁東塔門北側の偽窓と同じくクメール遺跡で特徴的に見られる。  早朝の東からの陽光と陰の具合から,南側であることがわかる。
偽扉上のリンテル・破風の様子(上)。 リンテルとは,扉(ここでは偽扉)のすぐ上の横長の長方形の部分で,縦横の比率が時代によって微妙に異なる。  破風はリンテルの更に上の三角形の部分。 クメール遺跡では,この破風の部分に方位を示す神様が刻されているケースが多い。 この南祠堂の南側破風には, 南の方位の神様であるヤマ神が雄牛に乗る姿が彫刻されている。


南西の角から望む境内全景
 ふぅ〜,南西の角まで辿り着きましたが,まだ半分も見てないんですよ。 ここでは写真もたくさん撮りました。 光の方向の関係でベストショットが撮れた訳ではありませんが,少しでも多くの映像を皆さんに見て戴ければと思い1ページ当たりの写真を10枚くらいにしています。

 バンテアイ・スレイについては幾多の方々がご紹介されていますので,特別珍しい訳でありませんが,このサイトでは編集部で調べ上げた範囲で少しでも映像を楽しめる解説ができればと努力しています。  少々食傷気味かもしれませんが,もう少しおつきあい下さい。

 さて,次は朝の陽光がちょっと届かない西から北側の方に足を進めてみましょう。 あの「東洋のモナリザ」に会えるのも,もうすぐです。


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