Cambodia Report 4.1

バンテアイ・スレイ
−その1−

今日も早起き,大陸の夜明け
 日が変わって1月2日,今日も早起きして遺跡巡りです。

 今日はまず,アンコール遺跡群の郊外にあるバンテアイ・スレイに行きましょう。 この遺跡は,宿をとったシェムリアップの街から北に40km,車で1時間ほどの地にあります。  これから写真でご紹介するとおり,ここバンテアイ・スレイは,アンコールの遺跡群の中でも指折りの美しさを誇り,旅行者には人気があるところです。 東向きで朝日に映え, こじんまりした(=一度に沢山の観光客は入れない)この遺跡は,チョット早起きして朝の早い時間に訪れる方がいいようです。

 バンテアイ・スレイとは,「女の砦」の意。 スレイが「女・女性」,バンテアイが「砦」の意味です。 ここは,王が建立したアンコール遺跡群の主要な寺院とは趣が異なり, ラージェンドラヴァルマン2世(944-968 のクメール王)の顧問として仕え,その後の王ジャヤヴァルマン5世(968-1000)の摂政を務めた王師ヤジュニャヴェラーハが,967年に建立したものです。  


東塔門全景(左)とその破風(上)

東塔門の上部破風には,ヒンドゥー教の神様のひとりであるインドラ神が,3つの頭を持つ象エラワンに乗った姿が彫られている。  インドラ神は,ヒンドゥー教の神様の中でも東を守る方位神であり,各地のクメール遺跡の東側の面で見ることができる。


  
第一周壁塔門に続く参道(上)と
石柱のレリーフ(右)

東塔門から伸びる参道は,長さ70mほど。 両側に並ぶ石柱は聖域を示すもので, タイ・カンボディア国境のクメール遺跡プリア・ヴィヘア(タイ語ではカオ・プラ・ヴィハーン)でも,同様な石柱を見ることができる。 石柱に上部には美しいレリーフが残っている。


参道途中のポーチに繋がる北側建物の入口(右)とその破風(上)

参道途中にはポーチがあり,その南北に,かつて屋根で覆われていたものと考えられる建物の跡がある。 北側の建物の入口の破風には, ヴィシュヌ神の化身で獅子頭人身の「ナラシンハ」が,魔神ヒラニヤカシプ(阿修羅王)を組み伏し,引き裂く場面が彫られている。


参道途中のポーチに繋がる南側建物の入口の破風
上の破風に向き合う南側入口の破風。 中央部に,シヴァ神とその神妃ウマが聖牛ナンディに乗る姿が刻されている。  残念ながらウマの頭部は損失しているが,片手をシヴァ神の左手に組んでいる姿である。


地面に置かれている破風

第一周壁東塔門の内側地面に置かれていた破風。 どこかの入口の破風が落ちたものだろうか。 この破風に彫られているのは, ヒンドゥー教でヴィシュヌ神,シヴァ神と並んで三神一体(トゥムルティ)を形成するブラフマー神が,聖鳥ハンサに乗る姿である。


悪魔に浚われるシーター

シーターは,ラーマヤーナ物語の主人公ラーマ王子の美しい妃。 この物語は,悪魔王ラーヴァナに誘拐されたシーターを, ラーマ王子が猿将軍ハヌマーンの助けを得て救い出す展開となっている。 これも上の破風同様,第一周壁東塔門外側の地面に置かれていたもの。  ラーマヤーナ物語の1シーンを彫刻したものであろう。



第一周壁東側から本殿を臨む
 この遺跡,環濠の内側の「境内」が東西40m強,南北40m弱と決して大きなものではありません。 しかし,ご覧のとおりまだ「境内」にも足を踏み入れていないのに, 彫りが深く鮮明なレリーフが目白押し。 とにかく素晴らしいの一言,こんなところが地球上にあったのかと思えるほど。 これらのレリーフは今から1000年以上前,アンコール・ワットの完成よりも前の時代に刻されたものです, 信じられますか?

 さて,第一周壁の東塔門から「境内」に入っていきましょう。 フランスの大御所がその魅力に惹かれて文学の舞台にしたこの遺跡,「境内」にはどのような美しさが待っているのでしょうか,楽しみです。


前のページへ カンボディア
旅行記
トップに戻る
次のページへ