Report 37

看板にみるタイ事情

道路沿いに「林立」する大型看板

 バンコクに着いて空港から市内に向かっていると,日本に較べて大きな看板が「林立」していることに気づかれる方は多いのではないでしょうか。  タイは日本よりも国土が広く,また台風の襲来が殆どありません。 交通手段としては距離にかかわらず車が主流ですから,道路沿いに看板が立つのは「自然の摂理」でしょう。  バンコク郊外に行くと,高さ数十m,幅は100mを超える看板なんてのも珍しくありません。 実際,バンコクから北にアユッティヤー方面への国道を車で走ると, 途中で壁のような看板に遭遇します。(写真が無くてスミマセン)

 看板の内容も半端じゃありません。 デパートの売り出しや,海外大物アーティストのコンサート,新しく発売された電化製品や車など,時々刻々と変わっていきます。  最近 (2004年) のタイの経済状況は悪くないようで,日本よりは景気がいい感じです。 バンコクの街ではマンションが次々と新築されており,既に「完売」のところもあるとか。

 景気の感触と七変化を遂げる看板を「へぇ〜凄いなぁ,こんなオバケのような看板って,広告料はいくらくらいなんだろう?」なんて, 呑気なことを考えつつ,毎日のようにボサ〜っと見ていました。

 と,ある日,何気なく見ていた看板に「面白い」ことを発見しました。 下の写真をご覧下さい。 おっと,これらの「商標」は,たまたま登場しているだけで, 利害関係や編集部の恣意は一切無いことをお断りしておきます。


ビル屋上の日本企業の大形看板 看板の左上に何やら…

 皆さんご存知の日本のブランドですね。 タイでも日本企業は頑張っています。 タイの人たちにもウケはいいですよ。 で,この看板,よ〜く見ると左上に何か書いてあるのです。 拡大してみると……


タイ語で「ソニー」(左),「トーシバ」(右)と書いてある

 タイ語の表記がありますねぇ。 えぇっ,どうしてかって? どうしてでしょうねぇ。 日本企業だから? じゃ,他の看板も見てみましょう。


スウェーデンの VOLVO(左)とタイ地元のデパート EMPORIUM(右)の看板

 スウェーデンの VOLVO にはの,そして EMPORIUM にものタイ語の表記がそれぞれ左上にありますね。  ということは,日本企業だけじゃないってことです。

 実は,タイには「看板税」というのがあり,これが事細かに規定されているため,このような小さなタイ文字が入っているのです。

タイの看板税(2004年8月現在)
種  別税  額
タイ語の文字のみのもの500cm2当たり
3バーツ
タイ語が上にあって,
その下に外国語または絵・
写真・マークが併記のもの
500cm2当たり
20バーツ
タイ語が無いもの または
タイ語が外国語の下に
記載されているもの
500cm2当たり
40バーツ
税額が200バーツ未満の場合は 200バーツを納税

 如何ですか,この発想! 素晴らしいじゃないですか。 タイの国の言語を一つの指標として税額を定めている点は,さすが誇りが高いタイだと頷けます。 どこかの国のように,訳の判らない横文字は「よく考えて使えよ!」ってことですね。

 では,上で紹介した某 SO*Y の看板の場合〜まぁ大きさは写真から概ね:幅10m×高さ2m と仮定〜の納税額を求めてみましょう。

 まず,看板の面積は,
 10m×2m = 1,000cm×200cm = 200,000cm2
次に,これを税額が定められている単位面積の 500cm2で割ると,200,000cm2/500cm2 = 400,従って

・上記の看板がタイ語だけだったら => 3バーツ×400 = 1,200バーツ(=約3,200円)
・上記の看板だったら => 20バーツ×400 = 8,000バーツ(=約21,000円)
・上記の看板にタイ語がなかったら => 40バーツ×400 = 16,000バーツ(=約42,000円)

ということになるのです。

 日本の税務当局の皆さん,サマワの自衛隊に景気よく1日1億円使う一方で,600兆円を超える債務(2003年3月現在残高)を抱えている現状を鑑み(=お役所言葉?),こういう柔軟な発想も見習うところではありませんかぁ? (2004年8月記)


「有力」コンビニチェーンの看板にも,上の方にタイ語有り