中国で暫く過ごしていると,車のナンバープレートが気になり出しました。 タイでは,編集部の総力を結集して 車のナンバープレートを分析 のページを作り上げました。
ここでは短期間の滞在の中で,これまでのノウハウをフルに活用して中国の車のナンバープレートを分析してみましょう。
各地の観光名所を巡っていると,駐車場などでツアーのバスをはじめ,いろいろな車に出会います。 我々日本人は幸いに漢字が理解できるので,ナンバープレートがどのように構成されているのが,概ね推測できるものです。
例えば左の写真の車は,北京の車であろうことが推測できる訳です。
2ケタ目以降が何を意味するのか? サンプルが少なければ推測のしようもなく,よく判りません。 毎日毎日,どこかの名所旧跡に足を運ぶのですから,多くの車を見るができます。 観光の時間の合間を見て,
いくつかの車のナンバープレートの写真を集めてみました。
中国の各地の車のナンバープレート |
(左上)陜西省西安エリア登録の一般車両 (右上)陜西省西安市の政府幹部公用バス(?)
(左下)安徽省合肥市登録の一般車両 (右下)四川省の警察公安車輌(推測) |
いろいろ写真を撮影しましたが,比較的よく映っているのは上のような感じです。 最も写りが良かったのは,はるばる内蒙古自治区からやってきていた車のナンバープレート。
このプレートを基に分析することにしましょう。
中国の車のナンバープレートの代表例 |
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(1) 直轄市・省・自治区を示す1文字の漢字 (2) 直轄市・省・自治区内のエリアを示すアルファベット1文字
(3) 5桁の数字またはアルファベット1文字+4桁の数字 |
上のナンバープレートは,内蒙古自治区,包頭市で登録された一般車両です。 一般車両は青地に白文字,商業車輌(営業車?)は黄色地に黒文字,軍用や公安車輌は白地に赤や黒文字のようです(一部推測含む)。
(1) の直轄市・省・自治区を示す漢字1文字は,それぞれの現在の名称や歴史的な地名などを基に定められています。
(2) のアルファベットは,各省や自治区の登録エリアを示すもので,例えば陜西省の場合では,陜A=西安,陜B=銅川,陜C=宝鶏,陜D=咸陽,陜E=渭南,陜F=漢中,陜G=安康,
陜H=商州,陜J=延安,陜K=楡林 となります。 ここがO〔オー〕(または0〔ゼロ〕?)の車は,省・自治区の政府専用車とのこと。 北京,天津,上海,重慶の4直轄市ではA〜Zまで全て直轄市での登録で,
市内の登録エリアの区分は無いようです。 この省・自治区毎の登録エリアは,中国の道路地図の巻末などに一覧が掲載されています。
(3) の5桁は,1桁目が1〜5とアルファベットの場合は登録エリアの市域内,6〜9の場合は市域外とのこと。 省・自治区で違いがあるかもしれませんが,TやXなどで始まる車輌はタクシー,
警察・公安車輌は「警」などの文字が併記されているようです。 また,上位2ケタが00〔ゼロゼロ〕の車輌は,登録エリア市の政府幹部公用車とのことで,
数字が若いほどエライ人の車とのことです。
それでは,上の (1) の部分を以下に解説します。 少しばかり中国の歴史や地理のおベンキョ〜の要素も織り交ぜています。
【中国のナンバープレートの漢字と直轄市・省・自治区】
ナンバープレート の漢字 | 直轄市・省 自治区名 | 解 説 |
| 北京市 | 春秋戦国時代,当時の七雄の一つ燕国の都がここに在り,燕京と呼ばれたことから「京」という略称となった。 明の時代の1403年に北京と命名し現在に至っている。 |
| 天津市 | 清の時代には隷州に属し,天津府と呼ばれた。 略称は天津の「津」。 北京,上海と並ぶ直轄市だが,1957〜1968年の期間は河北省の省都となったことがある。 |
| 上海市 | 紀元4〜5世紀の晋の時代,この地域に住んでいた漁民が作った竹製の漁具から「滬」(中国語の発音は "hu",日本語の音読は「コ」 )の名前をとり,上海の略称のひとつとなっている。 プレートの文字は「滬」の簡化字。 |
| 重慶市 | 隋・唐の時代に「渝州」と呼ばれていたことによる。 1189年に宋の光宗がこの地の恭王に任命され,その後皇帝に即位し『二重の慶び』だったことから重慶と呼ばれるようになった。 1997年に四川省管轄から直轄市になっている。 |
| 河北省 | 古代中国(紀元前7〜6世紀頃の春秋時代)で,このエリアは「冀州」と呼ばれていたことによる。 黄河の北に位置するので,唐の時代から河北と呼ばれている。 |
| 山西省 | 紀元前7〜6世紀頃の春秋時代七雄の1つ「晋」の国があった地域。 太行山脈の西に位置することから,古くから山西と呼ばれている。 |
| 内蒙古 自治区 | 内蒙古の「蒙」。 1947年に自治区となるが,1970年に行政区画の大幅な変更により東部は東北三省に,西部は甘粛省及び寧夏回族自治区に分割された。 その後1979年に現在のエリアに戻っている。 |
| 遼寧省 | 遼寧の「遼」の簡化字。 吉林省,黒竜江省と共に東北三省を構成する。 秦の時代に遼河の東西に遼東,遼西の郡が置かれた。 中華民国時代の1929年,『遥かな遼河の流れが永久に穏やか』という意の「遼寧」が省名になった。 省都の瀋陽は清の時代から奉天と呼ばれていたが,1945年以降は現在の名前に復している。 |
| 吉林省 | 吉林の「吉」。 省都の長春は,満州国時代には首都として新京と呼ばれていた。 北朝鮮との国境地域は延辺朝鮮族自治州があり,多くの朝鮮族が住んでいる。 |
| 黒竜江省 | 黒竜江の「黒」。 中国最北かつ最東の位置する省。 黒竜江(ウースリー川:4444km)は,中国第3,世界でも10番目に長い大河で,3000km以上に及ぶ省内のロシアとの国境線を成す。 |
| 江蘇省 | 江蘇の「蘇」の簡化字。 江蘇の名は,現在省都である南京市の区となっている江寧と,地級市である蘇州に由来するといわれている。 |
| 浙江省 | 浙江の「浙」。 省の3分の1のエリアを流域面積とする銭塘江は,曲がりくねっていることから「浙江」とも呼ばれ,これが省名の由来となっている。 |
| 安徽省 | 紀元前7〜6世紀の春秋時代に,現在の安徽省南西部の天柱山が太夫・皖伯の領土だったことから「皖山」と呼ばれ,これに因んで省の略称は「皖」と呼ばれている。 |
| 福建省 | 省の略称のこの文字は,「※ ("min")」(※は「門」の中に「虫」)。 中北部を東西に流れる河,※江に因るもので,紀元前500年頃からこの付近の地名として用いられている。 プレートの文字はこの※の簡化字。 |
| 江西省 | 江西省南東部から省都の南晶を通って%(ハ)陽湖(%は「番」におおざと)に流れる$(カン)江($は「章」を偏にふゆがしら〔冬の上半分〕の下に「貢」)の名に由来する。プレートの文字は簡化字。 |
| 山東省 | 省の略称は,紀元前7〜3世紀頃のこの地域の国名「魯」による。 現在でも省のほぼ中央部の標高1108mの魯山や,魯西南平野,魯西北平野などの名前で残っている。 |
| 河南省 | 省の大半が,黄河の黄河の中・下流域の南側に位置することから河南と呼ばれている。 古代中国(紀元前7〜6世紀頃の春秋時代)で,このエリアは「豫州」と呼ばれていたことによる。 |
| 湖北省 | 唐〜宋の時代のこの地の呼び名「鄂州」による。 鄂州は現在でも湖北省の1つの市の名前に残っている。 湖北の由来は洞庭湖の北に位置することから。 |
| 湖南省 | 省の中南部から北部の洞庭湖に流れる湘江に由来。 湖北省と対照的に,省の大部分が洞庭湖の南に拡がることから湖南と呼ばれる。 |
| 広東省 | 春秋戦国時代に「百粤」と呼ばれていたことから略称が「粤」とされている。 現在では,西隣の広西チワン族自治区と共にこの地域は「両広」と呼ばれている。 |
| 広西チワン族 自治区 | 秦の時代,この地に桂林郡が置かれたことに因んで略称は「桂」。 西部はベトナムと国境を接し,中越国境でも規模が大きな友誼関がある。 チワン族は中国語で壮族と記す。 |
| 海南省 | 古くから#崖(#は「王」偏に「京」)と呼ばれ,前漢の武帝の時代に#崖郡がおかれたことに因る。 現在も省内にある#海市に名を残す。 1988年に広東省から分離して海南省に昇格。 |
| 四川省 | クイ |
省名の「川」に由来するもの。 北宋時代の1001年に設置した成都府路,梓州路,利州路,クイ州路を川峡四路と呼んだことから四川と呼ばれている。 |
| 貴州省 | 省名の頭文字「貴」の簡化字。 宋の時代,当時の「矩州」が宋王朝に帰順した折に“矩”と“貴”が同じ発音であったことから貴州という名前になった。 |
| 雲南省 | 省名の頭文字「雲」の簡化字。 省の北部,四川省との境の雲嶺山地の南側に位置することから雲南の名が付いた。 ラオス〜タイ〜カンボディアを通ってベトナムから南シナ海に注ぐメコン川の上流で,ここでは瀾滄江と名前が変わる。 |
| チベット 自治区 | チベット自治区は中国語では西蔵自治区と表記する。 西蔵の「蔵」をプレートにしたもの。 中央部のことをチベット語で "Zang"(=「蔵」)と呼んだことから,国の西部にある Zang という意味を込めて「西蔵」と名付けられた。 |
| 陜西省 | 省名の頭文字を取って「陜」。 陜西の名前は,現在の河南省陝県一帯を指す陝原の西部に位置することによる。 |
| 甘粛省 | 省名の頭文字を取って「甘」。 宋〜唐の時代,このエリアに「甘州」(現在の張掖)と「粛州」(現在の酒泉)があったことから,この2つの名前をとって「甘粛」の名前になっている。 |
| 青海省 | 省名の頭文字を取って「青」。 青海の名は,中国最大の塩水湖である青海湖の名前に由来するもの。 |
| 寧夏回族 自治区 | 自治区名称の頭文字「寧」の簡化字。 1227年,チンギス・ハンは西夏王国を滅ぼし,元王朝は『西夏の平定と永遠の安寧』の意の寧夏行省を設置した。 1958年に甘粛省から分離し,自治区として独立した。 |
| 新疆ウイグル 自治区 | 自治区名称の頭文字を取って「新」。 ちなみに中国語では新疆維吾尓(「尓」の2画目の最後は下にはねる)自治区と記述する。中国最西部に位置し,面積は166万平方km(日本の約4.5倍)で行政区画最大。 |