Episode 1
プロローグ 
 「タイってどんな国なんだろう?」 旅にせよ滞在にせよ,外国に初めて降り立つ時には彼地が「どんな」処なのだろうかと,多くの人が期待半分,不安半分の思いになるものだ。

 初めてバンコクに降り立ったのは 2001年3月7日。 ムッとするような蒸し暑さと独特の空気の強烈な印象は,タイの地を初めて踏みしめた多くの人が幾多の書き物やウェブサイトに残しているが如く。  その地に長居することになるなんて微塵にも思わなかったのに,今となっては,あの独特の雰囲気は違和感なく懐かしい。

 このページでは,3年以上に亘るバンコクを中心とするタイや周辺諸国での経験に基づき,筆者が感じたことを気ままに綴っていくことにしよう。 メインページのように統計や裏付けを取るつもりはない。 むしろ,理屈では表現できない微妙な部分なんぞを紹介していきたい。 それが故に,多分に筆者の主観的な表現になりがちかもしれないが, それはそれで「そういう見方もあるんだ」として寛大に捉えて戴き,ここでの記述が某かでも皆さんのお役に立てば幸い。

 それでは『東南アジア身勝手見聞録?』,表紙を開けることにしよう。

豊かなタイ 
 2001年初頭にタイに行くことが決まると,まずは仕事の段取りと下調べとして数日間滞在することになった。 それまでに欧米には某かの期間滞在した経験があったが,東南アジアは初めて。  旅行ではシンガポールに行ったことがあったが,タイとなると勝手が違うだろう。 そう思っていろいろと事前調査をするも,多くの旅行記では観光名所やホテル,レストランの紹介ばかりで役に立たない。  このサイトを立ち上げた理由のひとつは,旅にせよ滞在にせよ,これからタイに行く人々にとって少しでも役に立てて貰えたらと考えたから。 現地で必要なモノが無くて不自由するのも困るので,何はともあれ要りそうなモノはスーツケースに詰め込んだ。

 さて,重い荷物を引きずって辿り着いたバンコクでビックリ。 あちこちに日本で見かけるコンビニエンス・ストアやスーパーマーケットはあるわ,道沿いで見かける露店にも新鮮な果物が山盛り。  「バンコクの街」に書いたとおり,質の良否や価格の高低はあれど,およそ思いつくモノは何でも売られているのだ。 旅行では気にも留めない電化製品を一通り揃えられることを知ったのも, その後バンコクに住み始めてからだった。

 後刻,周辺諸国を訪れた時にタイの豊かさを思い知らされるのだが,タイは食糧自給率が100%を超えている(2000年代初頭時点)世界でも稀な国であることは紛れもない事実であり,これが或いは「世界最強」の国になるのかもしれないと思ったのは,筆者だけじゃないかも・・・。

物価感覚1
 タイの物価については 「タイの物価事情」で概略を紹介している。 物価事情はわかっても,物価感覚は暫く腰を落ち着けないとわからない。  滞在初期の頃の失敗談を紹介しよう。

 休みの日に日帰りツアーに参加して,バンコク近郊を旅したことがある。 ガイドが日本語で案内してくれるツアーは,現地のフリーペーパーなどにヤマほど載っているが,その一つに参加したのだ。 朝から箱バンの車が迎えに来てくれて丸一日,タイ人女性の日本語ガイドがあちこち案内してくれた。 上手な日本語は地元の大学で学び,旅行業界に就職したとのこと。 英語はもとより日本語や韓国語,中国語などはこの業界で強さを発揮するらしい。

 さて一日の行程も終わり,ツアーが終わる時間が近づいている。 そこでふと,チップを渡そうという気になってしまった。 某かの料金は払っているとはいえ,一日中世話になったからには幾らかの心付けでもと思うのは,人が良い日本人の血を引いているからか?  そしていざ渡そうとすると,いくら渡せばいいかで迷ってしまった。 さぁあなたなら,朝から夕刻まで一日中案内してくれたタイ人の日本語ガイドに,いくら(何バーツ)渡すだろうか?

 仕事つながりのタイ人に携帯電話で事情を話して尋ねてはみたが,所詮チップ,「金額はあんた次第よ」と冷たくあしらわれてしまった。 さ〜て困った,幾ら渡せばいいのだろうか? 100バーツ(約300円)では少ないか? 500バーツ(約1500円)で足りるか?  いや,丸一日案内してもらったから 1000バーツ(約3000円)か? 散々迷った揚げ句,そこで 1000バーツをチップとして渡した。 彼女は黙って受け取ってはくれたが,怪訝な顔をしていた。 実はこれが大きな失敗だったとは,後で知ることになる。 続きは次のページで。