Episode 2
物価感覚2 
 我々日本人にとって,1000バーツは約3000円ほど。 では一般的なタイ人にとって,1000バーツとはいかほどの価値があるのだろうか?

 国を跨る貨幣価値の換算で陥りやすいのは,為替レートをそのまま適用してしまうことだ。 日本と同程度の物価水準〜それでも日本の方が「物価高」ではあるが〜の欧米諸国などであれば,為替レートを直接適用してもそれほど違和感は無いが, 物価水準が異なる国々の場合は為替レートに加えて,その国における物価水準をシッカリ把握すべき。

 タイの場合では,「タイの物価事情」で食事一食あたりの費用(概ね 20〜30バーツ)や, バスの初乗り料金(冷房車で 10バーツ)をそれぞれ基準にしてみると,1000バーツの価値は普通の食事代の30〜50倍,バス初乗り料金の100倍に相当する。 日本の価値に換算してもわかるように, これは彼女らにとってかなり高額な価値となる。

 ガイドの彼女は喜んだには違いないだろうが,果たしてその後に案内した日本人観光客から相応のチップを要求するようなことでもしていれば,渡した1000バーツが罪つくりだったことになる。  このことに気づいた後,チップに関しては随分考えさせられた。 貨幣価値の換算は,十分注意したいものだ。
 (このコラムの金額や為替レートは 2001年時点のものを記載)

ムギとコメの食文化 
 「一週間毎日三食同じ食事を食べるとしたら,チャーハンとハンバーガーのどちらを選ぶ?」 今までにこの疑問を投げかけた日本人の殆どは,チャーハンを選択した。

 バンコクで3年以上も不自由なく過ごすことができたのは,タイがコメ文化の国だからというところが大きい。 1997-98年にアメリカに滞在した際,2か月に亘ってアメリカ各地を旅したが, ハンバーガーやピザばかりの食事はすぐに飽きた。 アメリカで日本食レストランを探すのは大都市以外では至難の業だったが,大抵の町には〜味の優劣はあれど〜中華料理を出すレストランがあったので, コメが食べたくなったら一直線に飛び込んでチャーハンばかり食べていた。

 食文化の面から見ると,タイは中国南部の中華料理の影響を大きく受けている。 国の気候や地勢がコメを育んだ歴史も相まって,様々なコメの食文化を味わうことができるのだ。  これは多くの日本人にとって,歓迎すべきことだろう。 2003年8月 に中国の西安周辺を旅したが,この一帯はムギの食文化。 毎日出される食事はギョーザや麺類ばかりで,すぐに飽きてしまった。 「自分はコメ文化の人間なのだ」と改めて実感した次第。

 食事の好みは人それぞれだろうけど,アメリカやヨーロッパに長く住んでいる人達はどんな食生活を送っているのか,ちょっと興味が沸いてきた。 彼らはコメ無しでも大丈夫なんだろうなぁ・・・。

タイ料理は辛いか?
 タイ料理の代表格,トムヤンクン。 その辛さは「一粒で二度オイシイ(解説は こちら で)」といわれるほど(ホントかいな?)。 確かにタイに行ってスグの頃,気候に慣れてないせいもあったが, その辛さに大汗をかいて四苦八苦していたのを思い出す。

 「タイ料理って全部辛いんですか?」 よく訊かれることである。 裏返しの質問に直せば「ニホンジンっていつもスシ,スキヤキ,テンプラを食べてるんですか?」

 確かにタイ料理には辛いモノもある。 周辺の国々の料理と比較しても,タイ料理に辛さが強いモノが多い。 その理由までは勉強不足でまだ突き止めていないが,だからといってタイ料理の全てが辛いわけではない。 またタイの人達も, 全ての人が辛い味に耐えられるわけでもないのである。

 タイに興味を持つ人の中には,タイ料理は辛いモノばかりだと思い込んで,タイ行きを躊躇している人もあるかもしれない。 日本料理にもいろんな味があるように,タイの料理にも甘辛い味やサッパリした舌触りなど様々な味覚が揃っている。 スシやスキヤキが日本料理の全てではないように,トムヤンクンがタイ料理の全てではない。 辛いモノが苦手なあなたにも,きっと口に合うタイ料理が見つかるだろう。 〔2005年11月記〕