Episode 4
フォン・トック 
 「フォン・トック」,タイ語で雨が降るという意味だ。 「タイの季節は?」 に書いたとおり,バンコクでは5月頃から10月頃までは雨季。  タイの雨はスコール性の短期集中型である。

 雨が降り出すと,バイクはガードや高架の下に集い,道行く人々は近くの建物に入って雨が通り過ぎるのを待つというスタイルが一般的。 傘を持ってても,雨の勢いがハンパじゃないので正直言って役に立たない。

 テレビや新聞の天気予報も毎日のように「晴れ一時雨」の繰り返し。 日本のような気圧配置図も殆ど報道されないので,どうしようもないっちゃぁ,どうしようもないんだけど・・・。

 タイの人達の中には傘を持っている人〜女性が多い〜もいるが,雨に濡れないためではなく,むしろ日よけ(日傘)として使うことが多いようである。 日傘として使わないのであれば,持ってても邪魔になるだけ。  雨に遭ったら,ここは気長に止むのを待とうではないか。 日本では経験できないひととき,新たな発見に出会えるかもしれない。

寒いバンコク 
 タイの気候は日本に比べると,概して年中暑いのだけど,だからといって半袖だけでは身体を壊してしまう。 なぜなら,建物という建物,冷房付きの乗り物(舟は基本的に冷房無し, またバスや列車の一部はエアコンなしのものがある)は,その多くがことごとく冷房を効かせているからだ。

 原油の価格が徐々に上がった 2004年,タイでも省エネが叫ばれるようになり,夜10時以降はネオンサインの照明が禁止された。 しかし,冷房の設定温度に関しては触れられなかったようである。

 タイの中でも首都のバンコクでは,建ち並ぶ近代的なビルやバス,高架鉄道,地下鉄などの公共交通機関に冷房が導入されており,暑い気候の中で快適に過ごすことができる。 とはいえ,多くの場合, 快適なのは外界の暑さから逃れてきたほんの数分だけで,その後は怖いほどの寒さが待っている。 汗ビッショリな時なんぞは,風邪引き一直線なんてこともあるのだ。

 タイに旅する方も住む方も,薄手の長袖を1枚,常に携行することをお勧めする。 暑ければ着なくて済むのだが,寒い時ばかりはどうしようもない。 タイの人達がここまで冷房に拘るのは, 国民性によるものではないだろうかと思っているのだが,タイの人々の国民性は別項で紹介しよう。

タイの冬 
 タイにも「冬」は存在する。 まぁ「冬」といっても,タイの人々にとっての「冬」だから,我々日本人にとっては「冬」の部類には入らないだろう。  しかし,多くの日本人が常夏で年中暑いと思い込んでいるタイに,「冬」が存在することは確かである。

 年間平均気温が 28℃ほどのバンコクっ子にとって,気温が 25℃以下になれば長袖の姿が見られる。 20℃を下回れば,もう「寒い」世界だ。 12月〜2月頃がこの気候に相当し, 街のブティックには,マフラーや手袋が姿を現す。 が,その隣には水着やTシャツが年中君臨しているのだが・・・。

 2002年2月のドイツ・オランダ行き の前は大変だった。 冬場にヨーロッパに行くなんて,想定もしてなかったので日本から長袖は殆ど持って行ってない。  さて何を着ていくか・・・。 あちこち探し回っでも薄手の長袖はあるが,厳寒のヨーロッパに耐えうるようなモノはなかなか見つからない。 よほど日本まで取りに帰ろうかと考え初めていた頃に, やっとのことで北半球の長袖を見つけた。 ちょいと高かったけど,背に腹は代えられない。

 ということで,この時の教訓は常夏の国で過ごす場合でも,北半球の長袖を最低1着は準備しておくこと。 バンコクで入手した北半球の長袖は,帰国後も日本で立派に活躍している。 〔2005年11月記〕