異国の人々と交流するには,相手の歴史を知ることは必須,これはこれまでの経験から学んだことである。
アメリカに行った時に泊めてくれた大学教授の友人は,自分の住む町の歴史や自分の祖先がいつ,どこからアメリカにやってきたのかを事細かに話してくれた。 その時に「で,おまえはどうなの?」と聞かれ,
何も答えられなかった自分を恥ずかしく思った。 彼は「アメリカはたかが200年の歴史だけど,日本は数千年の歴史だから仕方ないよな」とフォローしてくれた。
タイの歴史を溯ると,6世紀の頃から,現在のインドや中国から渡来した民族が様々な小国家を成していたが,13世紀初頭になってタイ族が統一王朝をスコータイに建国する。 スコータイ王朝3代目のラムカムヘン王の時代には,
現在のタイとほぼ同じエリアに領土を拡大し,またタイ文字の統一など現在タイの礎を形成した。 しかしスコータイ王朝の隆盛は長続きせず,その後14世紀中期に同じタイ族が築いたアユタヤ王朝に併合された。
アユタヤ王朝は15世紀前半には今のカンボディアに侵攻,クメール王国のアンコール朝を滅ぼし,スコータイ王朝の時代よりも広いエリアを勢力範囲に治めた。 度重なる王権争いやビルマ(今のミャンマー)からの侵攻に耐えてきたアユタヤ王朝は,
タイの歴代王朝の中で最も長く栄えたが,ビルマからの侵略に敗れ,1767年にその歴史に幕を閉じた。
その後,アユタヤ王朝の高官であったタークシンがビルマを撃退し,チャオプラヤ川下流西岸のトンブリに王朝を開いたが,この王朝は1代限りで終わり,1782年に現在のラタナコーシン(チャクリー)王朝がチャオプラヤ川の対岸(東岸)に成立した。