July 2016

2016年
7月2日
(土)
【博多祇園山笠2016本格始動】
いよいよこのシーズン!
 1年の半分が終わり、7月がスタートしました。  7月と言えば、博多祇園山笠! 先月の日記 に書いたとおり、今年は特別に多くの飾り山が1週間早く、6月24日から公開されていましたが、7月1日から全ての飾り山の公開が始まりました。  水法被を着込んだ博多の男たちの姿を見るようになり、街の至るところには提灯が飾られて、少しずつ祭りの雰囲気が盛り上がっています。

 飾り山は福岡市内の比較的広い範囲に13基公開されています。 例年では14基なのですが、今年は東流が飾り山を作らなかったので13基です。  このところの福岡は雨が多く、今日は不安定な天気で蒸し暑い一日でした。 編集部では雨の合間を縫って13基の飾り山を取材し、博多祇園山笠2016の様子を皆さまにお伝えして行きますよ。

 今年は飾り山の番号順にご紹介していきましょう。 今日は二番山笠、西日本最大の歓楽街、中洲に飾られている中洲流の飾り山からのご紹介です。

*****【飾り山二番山笠 中州流】*****
〔表標題〕 知略真田勇戦誉
(ちりゃくさなだゆうせんのほまれ)
【人形師:三宅 隆】
〔見送り標題〕 一休知恵競之妙
(いっきゅうちえくらべのみょう)
【人形師:中村信喬】

 中洲流、今年の表標題は真田幸村が大阪夏の陣・冬の陣で活躍した姿を描いたもの。 見送りは、一休が屏風の虎を退治するシーンです。

 博多祇園山笠の標題は、概ね大河ドラマの影響を受けることがある(年によって濃淡はある)のですが、今年は「真田系」がいくつかありそうです。(1)


2016年
7月3日
(日)
【飾り山:千代流+上川端通】
 今日の福岡は、昨日に引き続き蒸し暑い季候です。 昨夜食した魚の刺身に「当選!」したのか、今朝から調子がよくありません...(泣)。
 
中洲流、今年は二番山笠

 昨日は二番山笠・中洲流をご紹介しましたが、「一番山笠は無いの?」と思われている読者の方もいらっしゃることと思います。  昨年7月の山笠紹介の日記 をご覧になっても、一番山笠の飾り山がありませんね。

 山笠は、一番山笠〜七番山笠と、九番山笠〜十七番山笠の2つのグループに分かれています。 一番〜七番は、実際に動く舁き山(かきやま)の順番ですが、舁き山だけでなく飾り山も作るところ(東流、中洲流、千代流)では、飾り山も共通の番号になります。  今年は東流が飾り山を作っていません。

 八番山笠は特殊で、飾り山でありながら舁き山同様、15日の追い山で櫛田神社に奉納されますので、「走る飾り山」の異名を持つ上川端通に固定されています。  そして九番〜十七番は飾り山専用の順番になります。

 この山笠の順番は、毎年それぞれ(一番〜七番と九番〜十七番)に1つずつ繰り上がっていき、一番若い順番になった山笠は、翌年は最後になるというわけです。  昨日ご紹介した今年の二番山笠・中洲流は、昨年は 三番山笠 でした。

 さて、今日は四番山笠・千代流と、不動の八番山笠、「走る飾り山」の上川端通の飾り山をご紹介しましょう。
 
*****【飾り山四番山笠 千代流】*****
〔表標題〕 真田日本一之兵
(さなだにほんいちのつわもの)
【人形師:川崎修一】
〔見送り標題〕 蘭陵王
(らんりょうおう)
【人形師:川崎修一】

 博多と隣駅の吉塚のほぼ中間付近に位置する千代町に飾られている千代流。 表標題は、大阪夏の陣で徳川家康に詰め寄る真田信繁の姿を、見送り標題は、勇壮な舞楽のモチーフになった中国・南北朝時代の北斉の王の異名「蘭陵王」を描いたものです。

*****【飾り山八番山笠 上川端通】*****
〔表標題〕 西遊記
(さいゆうき)
【人形師:田中比呂志】
〔見送り標題〕 本朝廿四孝
(ほんちょうにじゅうしこう)
【人形師:田中 勇】

 櫛田神社から最も近いところに飾られている上川端通の走る飾り山。 今年の表標題はキン斗雲(キン=角力)に乗る孫悟空を描いた西遊記。 そして見送り標題の本朝廿四孝は、戦国武将の武田と上杉を題材にした時代物の義太夫狂言で、歌舞伎の演目の一つです。(2)


2016年
7月4日
(月)
【飾り山:博多駅商店連合会+キャナルシティ博多】
 さて、今日は博多の玄関口の九番山笠・博多駅商店連合会と、比較的歴史が浅い十番山笠のキャナルシティ博多の飾り山をご紹介しましょう。  キャナルシティは博多駅からバスで10分ほど、半屋外に設置しているので、雨の日でも傘なしで観ることができますよ。
 
*****【飾り山九番山笠 博多駅商店連合会】*****
〔表標題〕
猛将幸村夏之陣
(もうしょうゆきむらなつのじん)
【人形師:生野四郎】
〔見送り標題〕
華丸・大吉のなんしようと?
(はなまる・だいきちのなんしようと?)
【人形師:田中 勇】

 例年博多駅の博多口に設置される飾り山。 今年の表標題は、中洲流千代流 と同様、大阪夏の陣で家康を追い詰めた真田幸村の猛将ぶりを描いたもの。 見送りは、博多華丸・大吉が出演する地元のテレビ番組をテーマにしたものです。

*****【飾り山十番山笠 キャナルシティ博多】*****
〔表標題〕 春興鏡獅子
(しゅんきょうかがみじし)
【人形師:置鮎琢磨】
〔見送り標題〕 蜂侍天下無双誉
(はちざむらいてんかむそうのほまれ)
【人形師:置鮎琢磨】

 キャナルシティの飾り山は 1996年の開業から設置されています。 今年の表標題は、明治時代に九代目市川團十郎の初演による長唄舞踊で、新歌舞伎の十八番の一つ、通称「鏡獅子」。  見送り標題は、今年J1復帰を果たした地元のサッカーチーム・アビスパ福岡の奮戦をテーマにしたものです。
 


 博多祇園山笠では、各流が毎年手拭を作ります。 キャナルシティ博多では、毎年全ての手拭を一同に集めて飾り山のすぐ脇に展示しています。 こちらもお楽しみください。(3)
 
キャナルシティ博多で毎年披露される各流の手拭


2016年
7月6日
(水)
【飾り山:川端中央街+ソラリア】
 まだ「梅雨が明けたとみられる」宣言は出てませんが、今日の福岡は夏の猛暑の一日。 ソフトバンクホークスも久し振りに勝ちました。

 今日は、上川端通 の飾り山と同じ川端商店街の北側に飾られている川端中央街と、天神の商業施設であるソラリアの飾り山をご紹介しましょう。
 
*****【飾り山十一番山笠 川端中央街】*****
〔表標題〕 日本一之兵
(ひのもといちのつわもの)
【人形師:中野親一】
〔見送り標題〕 ももたろう
(ももたろう)
【人形師:中野 浩】

 ここの表標題も真田信繁。 大阪冬の陣で活躍し、日本一(ひのもといち)の奮闘振りを描いたものです。 見送りはももたろう。 犬・猿・雉と大きな桃が飾られ、子供たちにも親しみがある題材です。

*****【飾り山十二番山笠 ソラリア】*****
〔表標題〕 決戦川中島
(けっせんかわなかじま)
【人形師:置鮎正弘】
〔見送り標題〕 山崎の合戦
(やまざきのかっせん)
【人形師:小嶋慎二】

 天神の西鉄福岡駅近くの大型商業施設であるソラリアプラザの1階に置かれている飾り山です。 表標題は武田信玄・上杉謙信の川中島の戦いを勇壮に描いています。 見送りは秀吉が明智光秀を討った山崎の合戦を描いたもの。  残念ながらウイスキーの姿はありませんでした(笑)。(4)


2016年
7月7日
(木)
【飾り山:新天町+博多リバレイン】
 今年も七夕の日になりました。 皆さんのところでは、今夜は天の川を見ることができましたか?

 今日は、天神の中心部にある新天町の飾り山と、川端商店街の北口の道路を挟んだところに置かれている博多リバレインの飾り山をご紹介しましょう。
 
*****【飾り山十三番山笠 新天町】*****
〔表標題〕 須佐之男切大蛇
(すさのをおろちをきる)
【人形師:亀田 均】
〔見送り標題〕 サザエさん
(さざえさん)
【人形師:亀田 均】

 新天町のアーケードの途中に置かれているこの飾り山。 近くにはカフェバーもあり、チョッと一杯飲みながら見ることができます。  表標題は、ヤマタノオロチに酒を飲ませて退治する須佐之男命(すさのおのみこと)の日本神話の図。 見送りは、新天町の飾り山の定番のサザエさん、今年は一家でお祭り気分です。

*****【飾り山十四番山笠 博多リバレイン】*****
〔表標題〕 戦国桶狭間
(せんごくおけはざま)
【人形師:生野四郎】
〔見送り標題〕 昔話博多勢揃い
(むかしばなしはかたせいぞろい)
【人形師:生野四郎】

 アンパンマンミュージアムや福岡アジア美術館が入る大型商業施設の博多リバレインの前に置かれている飾り山。 表標題は、織田信長が今川義元の大軍に勝利した桶狭間の戦いを勇壮に描いたもの。  見送りは、第99回ライオンズクラブ国際大会で世界中からおいでになる皆さまのために、日本の有名な昔話の主役を揃えたもの。 海外の方々に日本文化を紹介するテーマにしたものです。(5)


2016年
7月9日
(土)
【飾り山:天神一丁目+渡辺通一丁目】
 参議院議員選挙の活動も今日まで、明日は投票日です。 皆さん、投票には必ず行きましょうね! 編集部では既に期日前投票を済ませました。

 さて今日は、天神の中心部から少し南にある天神一丁目の飾り山と、博多駅〜天神の途中に置かれている渡辺通一丁目の飾り山をご紹介しましょう。
 
*****【飾り山十五番山笠 天神一丁目】*****
〔表標題〕 大阪冬之陣
(おおさかふゆのじん)
【人形師:中村信喬】
〔見送り標題〕 大阪夏之陣
(おおさかなつのじん)
【人形師:白水英章】

 天神の博多大丸の本館と別館の間の「アリーナ」的なところに飾られている十五番山笠。 今年は表標題が大阪冬の陣、見送り標題が大阪夏の陣と「対標題」のようなイメージになりました。  真田人気は相変わらずのようです。

*****【飾り山十六番山笠 渡辺通一丁目】*****
〔表標題〕 決闘巌流島
(けっとうがんりゅうじま)
【人形師:中野親一】
〔見送り標題〕 愛と勇気のアンパンマン
(あいとゆうきのあんぱんまん)
【人形師:中野 浩】

 天神を南北に縦断する渡辺通の南の端、ホテルニューオータニの前に置かれている十六番山笠。 今年は佐々木小次郎と宮本武蔵の決闘を描いた巌流島のシーンが表標題。  見送りは昨年に引き続いて登場したアンパンマン。 おなじみの「レギュラーメンバー」が揃ってます。(6)


2016年
7月11日
(月)
【飾り山:福岡ドーム+櫛田神社】
 今日は、某コンビニチェーンの語呂に近い日ですが、特にキャンペーンやセールなどの催しは無いようですね...(笑)。

 7月に入って博多祇園山笠の飾り山を順次紹介してきましたが、編集部の精力的な取材(笑)により、今日で全ての飾り山の紹介が終わります。  今日は街の中心から少し西に置かれている十七番山笠・福岡ドームと、博多総鎮守・櫛田神社に「常設」されている飾り山をご紹介しましょう。
 
*****【飾り山十七番山笠 福岡ドーム】*****
〔表標題〕 熱男翔若鷹
(あつおとぶわかたか)
【人形師:置鮎琢磨】
〔見送り標題〕 奇襲桶狭間決戦
(きしゅうおけはざまのけっせん)
【人形師:三宅 隆】

 今年もパリーグ1位の座をキープしている福岡ソフトバンク・ホークスの本拠地であるヤフオクドームの入口付近に飾られている十七番山笠。 表標題は優勝の祈りも込めてホークスの快進撃を描いたもの。  見送りは、十四番山笠・博多リバレイン の表標題にも使われている、根強い人気の桶狭間の戦いがテーマです。

*****【飾り山番外 櫛田神社】*****
〔表標題〕 京都五條橋之上
(きょうのごじょうのはしのうえ)
【人形師:亀田 均】
〔見送り標題〕 古事記稲羽素兎
(こじきいなばのしろうさぎ)
【人形師:今井洋之】

 「走る飾り山」である上川端通の飾り山を含めて8つの舁き山を奉納する、博多総鎮守の櫛田神社。 ここには年中常設の飾り山が置かれています。 今年の表標題は牛若丸と弁慶が対決した京の五條大橋。  見送りは古事記に著されている稲羽の白ウサギが皮を剥ぎ取られたシーンを描いたものです。
 
博多総鎮守 櫛田神社

 15日朝の追い山まで、残り4日になった今年の博多祇園山笠。 いよいよ舁き山も動き出し、祭の場面は「静」から「動」に移っています。

 明日は追い山の練習である「追い山ならし」です。  15:59 に一番山がスタート。 櫛田神社境内の清道旗を回って「祝いめでた」を唄い上げ、街に繰り出して追い山コースの途中までを走ります。  各流は、追い山に向けて山や舁き手の具合を総合的に調整します。

 昼間に8つの山を一度に見られる唯一の機会ですが、残念ながら明日の天気予報は雨と出ています。  まぁ、雨でも山は走ります(=中止にはなりません)が...。

 櫛田神社でも祭のムードが日に日に盛り上がり、最終日に向けて気が引き締まっていく博多の街です。(7)  


2016年
7月16日
(土)
【博多祇園山笠2016 総括】
 博多祇園山笠は今年で 775年目。 例年どおり15日(金)朝の追い山で全日程を終了しました。 今年も追い山の取材には行かなかったので舁き山は全く取材できてなく、いつものように手抜きになってしまいました、スミマセン。

 それでは、本サイトではお馴染みの博多祇園山笠の総括をしましょう。

平成28 (2016) 年度 追い山総括
流 名標 題櫛田入
タイム
全コース
タイム
一番
山笠
東  流若武者応破波濤わかむしゃまさに
はとうをやぶるべし
31秒5429分17秒
二番
山笠
中 洲 流坂田怪童丸さかたかいどうまる35秒4333分58秒
三番
山笠
西  流弁慶仁王立べんけいにおうだち31秒0530分44秒
四番
山笠
千 代 流秀麗陵王鬼面勲しゅうれいりょうおう
きめんのいさおし
33秒4029分38秒
五番
山笠
恵比須流神光普照三千界じんこうあまねく
てらすさんぜんかい
41秒8333分31秒
六番
山笠
土 居 流福之神招来ふくのかみしょうらい37秒7430分44秒
七番
山笠
大 黒 流鐵 心 肝てっしんかん34秒9729分37秒
八番
山笠
上川端通表:西遊記さいゆうき52秒55−−
見送り:本朝廿四孝ほんちょうにじゅうしこう

 今年の四番山笠・千代流の標題は、中国の蘭陵王を題材にしたものです。 12日(火)の追い山ならしまでは「鬼面」をつけていたのですが、13日(水)の集団山見せからは「鬼面」を外して「秀麗」の姿に変わり、話題になりました。

 例年、全コースのタイムが30分を切るのは、東流と千代流が「常連」でしたが、今年は大黒流も30分を切る素晴らしいタイムを出しました。  追い山は「タイムレース」というわけではないのですが、山を舁く男達が、いかに結束したかの一つの目安になるのではないでしょうか。

 これまでの記録に興味がある方は 2015年の追い山のタイム2014年の追い山のタイム などをご覧ください。

 さらに、今年の追い山では、櫛田入りタイムのアナウンス担当が、これまでの逸見(へんみ)明正さんから長岡大雅さん(共に、地元の放送局・KBC九州朝日放送のアナウンサー)に変わり、「若返り」が図られました。

 北部九州は、今年もまだ梅雨明け宣言は出ていませんが、山笠が終わり、博多は本格的な夏を迎えます。(8)    


2016年
7月24日
(日)
【最後の展示@石橋美術館】
 九州はいつの間にか梅雨が明けて〜気象庁は18日(月・祝)に「梅雨が明けたとみられる」宣言を出したようでした〜、暑い日が続くようになりました。

 この週末、編集部では福岡県久留米市にある石橋美術館に取材に出かけました。 実はこの美術館、8月一杯で「石橋」の名前が消える運命で、今回の展示が石橋美術館としては最後のものになります。
 
石橋文化センターの正門から美術館を望む 今回展示のポスター

 石橋美術館は、1956(昭和31)年に、当時のブリヂストンタイヤ株式会社(現在の株式会社ブリヂストン)の社長をされていた石橋正二郎氏が、創立25周年の事業として郷里の久留米市に寄贈された石橋文化センターの施設の一つです。

 美術館や博物館が現在ほど一般的でなかった当時、地方都市の久留米市にオープンした本格的な美術館は、一世を風靡しました。  県庁所在地にも美術館や博物館はまだ無く、福岡県文化会館(現在の福岡県立美術館)が開館したのは、石橋美術館開館の8年後の1964(昭和39)年になってのことでした。

石橋正二郎氏 石橋美術館のエントランス

 石橋美術館の収蔵品は、石橋正二郎氏の個人コレクションを基本としています。 このコレクションは、正二郎氏が画家の坂本繁二郎から「郷土画家の青木繁の作品の散逸を防ぐため、青木繁作品を買い集めて美術館を作って欲しい」と頼まれたことがきっかけとのことです。

 
編集部のギャラリーに鎮座する「海の幸」

 開館から60年を迎える今、石橋美術館の収蔵品は、地元出身の青木繁や坂本繁二郎はもとより、藤島武二や黒田清輝など、日本を代表する洋画家の作品が450点ほどと、陶磁器や日本書画などが250点ほどに上るそうです。

 この石橋美術館の運営は、当初は久留米文化振興会が行い、その後1977(昭和52)年から石橋財団が行ってきましたが、2016年秋から久留米市に運営が移管することになり、美術館の名称も「久留米市美術館」に変わることになります。

 石橋美術館としては最後の展示となる「石橋美術館物語」は、夏休み終盤の 2016年8月28日(日)までの開催です。

 今回の取材で、編集部も予算を捻出して青木繁の代表作「海の幸」(重要文化財)(の複製)を買い上げ、コレクションに加えました(笑)。 早速編集部のギャラリーに鎮座しております。(9)