陸続きの国境・・・日本ではピンと来ないが、タイは西にミャンマー、北にラオス、東にカンボディア、そして南にマレーシアと陸続きの国境を接する国である。
本サイトの 国境特集 では、4つの往来ポイントについてリポートした。 陸続きの国境といっても、タイの場合は国境線沿いに鉄条網が張り巡らされているわけでも、
兵士が24時間警戒しているわけではないが、国境に近づくに連れて軍が検問を張っていた。
国境特集では、国境の各往来ポイントを取材した時点でのことを基に書いたので,現在でも同じ状況とは限らない。 2国間の関係のみならず、何の前触れもなく突然状況が変わることは日常茶飯事。 それぞれの国境の往来ポイントを通過しようとするのであれば、
外国人の国境越えが可能か否か、どこでどのような書類や手続きが必要かなどについて大使館や領事館などの情報に基づき、必ず自己責任で調査することが肝要である。
タイに居る時に、こんな笑い話を聞いた。 第三国から遙々タイに辿り着いた2人組の密入国者が、タイの田舎町でタイの人に相談した。 「これからバンコクに行きたいのだが、途中で警察に捕まって、どこから来たのかと聞かれたら何と答えればよかろうか?」
タイ人は「おまえは、ナコン・ラチャシマーから来たと言え、そしておまえはウボン・ラチャターニーから来たと言え。」とアドバイスした。 その足でバンコクに向かった2人組、案の定警察に職務質問された。 「おまえ達はどこから来たのか?」
すると1人が「ナコン・ラチャターニーから来ました。」と答え、もう1人が「ウボン・ラチャシマーから来ました。」と答えた。 2人は、ほどなく捕まってしまった・・・。
これはタイが陸続きの国境を有するが故の笑い話であり、密入国者が身近なものであることを窺わせる話題であろう。 実際タイ国内、特に国境周辺には国籍が明確でない民族が多く住んでいる。 タイ周辺の歴史を紐解くと、
確かにいくつかの王国などが時代ごとに勢力を拡大・縮小させており、特定の地域をベースにしていた少数民族は、その時々の勢力下に入った。
アジアとアフリカの国境は、欧米人が勝手に引いたものだと言われている。 現在の国境は、19世紀後半にイギリス・フランスがインド〜東南アジア地域を植民地化した時の勢力範囲に基づいたもの。 それまでの時代、時の勢力の移り変わりはあったにせよ、
彼らなりのローカル・ルールに基づいて交流してきたそれぞれの民族にとっては、大きな迷惑になっているといっても過言ではないだろう。